QOTAROO
と話す
大阪とバンコクを拠点とするグラフィックデザイナー。実験音楽やエレクトロミュージックのフライヤーやカバージャケットなどを手がける。

QOTAROOは、大阪とバンコクを拠点とするグラフィックデザイナー。10代の頃に始めたハウスDJが彼の原点だ。2002年に大阪の味園ビルにあるマカオで開かれていた伝説のパーティ「FLOWER OF LIFE」のスタイルとスピリットに大きな影響を受け、2003年に参加した「バーニングマン」をきっかけに、日本でのパーティーのオーガナイズとフライヤーのデザインを開始した。また、大阪道頓堀にあったCLUB ZINGのブッキングマネージャーとして、DJやミュージシャンを始めとする多くの国内外アーティストをブッキング。2008年には、DJ CMT、DJ DNT、YAMACHANG(ライティング・アーティスト)、KABAMIX(サウンドエンジニア)らとともに新しいパーティ「POWWOW」を立ち上げ、国内各地でパーティーを行った。
デザイナーとしても、さまざまな技法やスタイルを駆使し、日本全国のパーティーフライヤー、CDやレコードのジャケット、広告、ウェブ、アパレルブランドへアートワークを提供している。グラフィックデザインの仕事に加え、新月と満月の時にだけオンエアーする配信番組「月面TV」のプロデュースや、バンコクのカルチャーマガジン『MAZIRU』の創刊チームへの参加、2016年から2018年までは大阪のミックスメディア・プロダクション「COSMIC LAB」への参加がある。
作品には、<RVNG intl>からアルバムをリリースしたVisible Cloaksと尾島由郎 & 柴野さつき、Idjut Boys、Laraaji、Gigi Masin、Paradise Bangkok、Maft Sai、DUBWAY、Giant Swing、Low End Theory、DJ Harvey、Oneohtrix Point Never、Dublab(日本)など、著名なアーティスト、DJ等が出演するコンサートやパーティーのフライヤーやを手がける。

Laraaji - Osaka, Japan Tour (16/09/2018)
-現在製作中の作品は何ですか?
最近フォーカスしているのは、プロッターマシンを使った表現です。ペン・プロッターは、線の太さやインクの出方など、描画を制御しきれないアウトオブコントロールな部分があるところがとても面白く、描画するたびに次のアイデアが出てきます。
2019年2月に参加した、バンコクのJam Factoryで開かれたアートイベント「ArtGround 04」では、初めてペン・プロッターマシンで描いた連続的な幾何学パターンを展示しました。連続的と言っても、同じパターンが連続して並んだ模様ではなく、空間軸に沿ってパターンが変化する作品です。
今年からグラフィック制作環境を、Patternodes (*1)とProcessing(*2)に変更したので、複雑に変化するパターンのプロトタイピングの速度が上がり、いろいろと実験しています。

Enitokwa - 2069
以前、ENITOKWAという大阪のアーティストのアルバムカバーを制作したときにも、空間軸に沿ってパターンが変化する作品を提供しましたが、当時はAdobeのイラストレーターを使用してパターン製作をしていたので、とても時間がかかりました。
(*1) ノードベースのグラフィック描画プログラム
(*2) ビジュアル表現に特化したJavaベースのプログラミング言語
-ハウスDJとしてキャリアをスタートしたとおっしゃっていましたが、いつ始めて、どんなトラックに影響を受けましたか?
DJを始めたのは17歳くらいの時で、最初に影響を受けたのは当時のニューヨークとシカゴのアンダーグラウンドハウスミュージックです。
-Club Zingでブッキングマネージャーをしていたときに印象に残っているギグを教えてください。
ZING在籍中は、大阪ローカルDJのパーティーは印象に残ってるものがたくさんありますが、イタロ・ディスコのレジェンド・Alexander Robotnickのギグは特に印象に残っています。彼が僕のヒーローということもありますし、ショーがピークに達したとき、突然店の全ての電源が落ちたトラブルがあったにも関わらず、お客さんの興奮が止まず再び音がなり始めた後の盛り上がりも凄かったです。
Thomas Fehlmanのライブの出音の凄さにも感動しました。オーディオインターフェイスなしで、ラップトップからの出力を直接PAに送っていたのですが、音は魔法のようでした。
Prins Thomasの初来日公演のオープンラストのロングセットも印象に残っています。平日とは思えない数のお客さんが集まり、素晴らしいパーティーになりました。

写真:Suphakorn Buayangtoom
-POWWOWで最も印象的だったパーティはなんですか?
選ぶとしたら、レジデントDJのみで開催した第1回目のPOWWOWです。パーティーが始まる前からメンバーと話していたコアコンセプトが完璧に表現されたダンスフロアが出現していて、やっている自分たちも衝撃の日でした。

WOLS feat. POWWOW at ALZAR (23/03/2019)
-あなたの友人によるインタビュー記事のなかで、「音が見え、光が聞こえる」とおっしゃっていましたが、それを聞いてシナスタジア(共感覚)を思い出しました。シナスタジアはご存知ですか?
シナスタジアの存在は知っています。その感覚にはとても興味があり、視覚と聴覚を等価にアウトプットしているアーティスト達からは多大なインスピレーションを受けています。ボアダムスのEYEさんの音と視覚のアウトプットにはいつも刺激を受けています。あとは大阪在住のアーティスト和泉希洋志(いずみ・きよし)さんの聴覚、視覚、味覚を等価に表現としてアウトプットするDIY的な表現活動からも、インスピレーションを受けています。
「音が見え、光が聞こえる」というのは制作の際に意識している感覚のメタファーで、実際に自分がシナスタジアを持っているとうわけではありません。音楽に向き合う仕事をしているときは、音の質感や、音色、音から見えるイメージを探したり、音と音の隙間を感じながら作業しています。ダンスミュージックの仕事をするときは、特に低音の質感が視覚のアウトプットや世界観に影響することが多いです。

写真:Suphakorn Buayangtoom
-どのようにバンコクでのパーティ「Giant Swing」に関わるようになったのですか?
初めてバンコクに来た2010年にGiant SwingでのオリジナルメンバーのHiroo君と庭ちゃん(DJ mAsa NiwAyama)と出会いました。当時は2人ともバンコクを住んでいて、僕は日本に住んでいたのですが、GiantSwingをするのでロゴを作って欲しいと連絡をもらい、関わるようになりした。その後、VJとしても参加することになり、僕のバンコク初個展やGOJAでの個展の際も一緒にパーティーしてもらったりと、気づけばもう10年の付き合いになります。

Giant Swing Logo
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好きなヴィジュアルアート/デザイナーワーク
お気に入りのアーティストを5人に絞るのは難しいですね。僕がグラフィックデザインを始めた当初から影響を受けた、または驚きを与えてくれたアーティストとグラフィックデザイナーを選びました。
NAOHIRO UKAWA ( Dommune )
http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/ukawa-naohiro-interview
EYE ( Boredomes )
https://en.wikipedia.org/wiki/Yamantaka_Eye
IPPI
http://www.ippi.jp/information.htm
http://www.hellogasshop.com/products/list.php?category_id=304
Abdul Mati Klarwein
Hipgnosis
https://en.wikipedia.org/wiki/Hipgnosis
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好きなアルバム
ここ数年、曲だけではなくアルバム全体を通して音楽を聞いていました。制作中は、テクノかアンビエント、ドローンをよく聴いています。僕が制作中によく聴いているアルバムを選びました。
DOLPHINS INTO THE FUTURE - ....on Sea Faring Isolation
(このアルバムは2011年から8年間聴いています。何度聴いたかもうわかりません)
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好きな映画
あまり映画には興味がなく、そんなにたくさんは観ません。一度好きな映画をみつけたら、それを何度も繰り返し観ます。
Stanley Kubrick - 2001: A Space Odyssey
Stanley Kubrick - The Shining
スタンリー・キューブリック 『シャイニング』
Carlos Saura - Flamenco, Flamenco
(スタンリー・キューブリックの映画が好きです)
What Happened, Miss Simone?
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Favorite Books
Crystal World by J. G. Ballard
Goodbye to Future : A New Hope by 若林 恵 Kei Wakabayashi
Don't Sleep, There Are Snakes by Daniel L. Everett
https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=121515579
http://content.time.com/time/arts/article/0%2C8599%2C1859528%2C00.html
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クレジット
通訳アシスタント: Sarun Yoklong
撮影場所:The Lantern, Bangkok